MFT 完全ガイド
MFT(マネージドファイル転送)とは?
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する企業では、利用するデータやアプリケーションの数が急速に増加しています。これらのデータとテクノロジーを管理するために、社内のチームやアプリケーション、外部パートナーとの間でファイルやデータの転送・連携が必要になります。
しかし多くの組織では、チームも個人も特定のワークフローをサポートするために、場当たり的にファイル転送用のツールを選択して導入しがちです。こうした場当たり的な対応は短期的には課題を解決してくれますが、長期的には未整理で複雑化したツールやスクリプト、安全性の低い処理やフロー、頻繁なエラーや障害対応などが原因で、業務効率を低下させてしまうことがしばしばです。
そこで役立つのが、本記事で紹介するMFT(マネージドファイル転送)です。
MFT とは?
MFT(マネージドファイル転送)とは、核となる単一のソリューションを介してデータを安全かつ自動的に転送する技術であり、重複したセキュリティ保護のないツールやスクリプトを排除するのに役立ちます。MFTは、業界標準のネットワークおよび暗号化プロトコル、デジタル証明書および署名、否認防止、その他のセキュリティ機能を使用することで、セキュリティを強化しつつファイル転送の送受信におけるあらゆる側面を網羅できます。
MFT システムは、レガシーなファイル転送システムやその場しのぎのツールに代わって、無駄や重複を排除して統合された手法を利用して、組織においてこれまでになく大きな役割を果たしています。
マネージドファイル転送の「マネージド」とは、ネットワーク、システム、アプリケーション、取引先、クラウド環境など、組織全体にわたってデータを自動化、および転送するソフトウェアの機能を指します。そして、マネージドファイル転送用アプリケーションはこれらを一元的的に管理します。
セキュリティ問題を解決するための設計
従来、多くのファイル転送ツールは単にファイルを送受信するためだけに作られ、セキュリティは後回しにされていました。そのため、こうしたツールは重大なセキュリティリスクをはらんでいました。
MFT、特に最新のマネージドファイル転送ソフトウェアは、いくつかの主要なセキュリティメカニズムでセキュリティリスクを低減させるように作られています。
暗号化 - ファイルレベルのセキュリティ
MFT ソリューションでは、最新の暗号化手法を使用してデータを保護するため、受信者のシステムはメッセージ自体を復号化するための秘密暗号化鍵を所有および使用する必要があります。
セキュアな標準プロトコル - 転送中のセキュリティ
データが最も脆弱な場面の1つは、転送中です。メール、フラッシュドライブ、SMS のいずれであっても、データは送信されるたびに傍受され、盗まれる可能性があります。これを防ぐには、セキュアなプロトコルを介してファイルを送信することです。
FTP、HTTP、SMTP などの以前のプロトコルはセキュリティで保護されていませんでした。しかし、AS2、SFTP、FTPS などの最新のプロトコルは、組織間、Web を介した取引先へのデータ転送、およびアプリとデータベース間のデータ転送を保護します。残念ながら、ほとんどの組織では、セキュリティで保護されていない古いプロトコル、特にFTP を使用したアドホックなファイル転送ソリューションが多数あり、これは重大な脆弱性になっています。
MFT プロトコルの詳細については、MFT/EDI プロトコルページを参照してください。
DMZ プロキシサービスとファイアウォール
MFT ソリューションは多くの場合、プロキシを提供しているため、ファイルを送受信するためにファイアウォールを開く必要はありません。これはセキュリティの重要な部分です。
デジタル証明書、署名、否認防止
また、MFT は、デジタル証明書と署名の管理を提供することでセキュリティを強化します。ドキュメントの送受信には、固有の証明書と署名の発行、送信者と受信者のID の確認、転送中にファイルが変更されていないことが保証されます。このプロセスでは、否認防止と呼ばれる、パートナー取引の重要な要素であるドキュメント受領の法的証拠も提供されます。
MFT のユースケース:MFT で処理できるファイル転送の種類
統合MFT ソフトウェアソリューションを使用して、複数の種類のファイル転送を処理できます。どのような使い方をしても、MTF では大容量のファイルを高速に転送できます。また、ファイル転送の自動化も簡単に行うことができます。
アドホックな転送
個人間、チームと部門間、またはWeb を経由して他の組織に転送することができます。現在同じ目的のために使用されているアプリケーションのスイート全体を置き換えることで、面倒な作業を減らし、デジタルデータが散らばってしまうのを防ぎます。
B2B/EDI - 電子データ交換
MFT ソリューションを使用すると、重要なビジネスドキュメントを主要な取引先と交換できます。たとえば運送会社は、MFT を使用してスプレッドシートや配送情報を送信し、サプライチェーンパートナーの在庫を追跡できます。セキュアなAS2 プロトコルを介して、公式に認められたEDI フォーマットで発注書を送受信できます。
EDI の詳細については、EDI リソースガイドを参照してください。
A2A - アプリケーション間転送
アプリケーション間でのファイル転送は、ビジネス内のより広範なA2A 統合の一部として、アプリケーションとデータベース間でファイルを直接移動するために使用されます。
MFT の利点
一般的な単発のFTP またはSFTP ソリューションとは異なり、MFT ソフトウェアには通常、ビジネス向けに設計されたさまざまな機能を備えています。以下では、大きなメリットのいくつかを紹介します。
転送の一元化と合理化
すべての転送を一元管理することで、高価な重複ソリューションを排除し、メンテナンスや時間の無駄を削減することができます。アクティビティログでは、ファイルの保存場所、ファイルが開かれたかどうか、転送に失敗したかどうか、再送する必要があるかどうかが記録されます。
自動化とスケジューリング
最新のMFT ソリューションは、ファイル転送の処理だけでなく、手動プロセスの効率的な自動化とスケジューリングを可能にし、時間の無駄を削減するように作られています。MFT を使用すると、手動でファイルを転送したり、スクリプトを記述したりする必要がなくなります。また、転送の失敗を検出して通知し、失敗した送信を自動的に再試行することもできます。
大規模メッセージへの対応
MFT ソリューションは、製品カタログ、在庫ログ、または単に大規模な送信など、非常に大規模のメッセージを効率的かつ低コストで処理できるように設計されています。手数料は発生しません。MFT にはエンドツーエンドのストリーミング機能と再送信機能が組み込まれているため、中断された転送を最初からファイルを再送するのではなく、中断した場所から再開できます。MFT 以外のアドホックなFTP クライアントやその他のツールの多くは、非常に大きなファイルを扱うことができません。
セキュリティの強化
前述したように、MFT はアドホックなファイル転送による応急的な措置に存在するリスクと危険な脆弱性を大幅に低減します。
接続性
最新のMFT ソリューションは、API ベースのアーキテクチャと個々のデータソース用のデータコネクタで構築されており、マイクロサービスやコンテナ化といった革新的なテクノロジーをサポートしています。この最先端のアプローチは、アドホックファイル転送ツールの分離とはまったく対照的であり、アプリケーション、データベース、およびパートナーシステムへの接続を可能にします。
信頼性と可用性
MFT ソリューションは、アドホックなファイル転送ツールでは実現できない高い信頼性を提供します。例えば、複数のデータセンターを管理する場合には、ビジネスのSLA 要件に応じた最適な稼働時間を実現する可用性が重要になります。
可視性、レポート、ダッシュボード機能の強化
MFTは、レポート作成にも有効です。ファイル転送の一元化と合理化により、プロセスの追跡が容易になります。また、高品質のMFT ソリューションには、スループット、ユーザー数、データの連携先、メッセージを開いたユーザーなどを把握できるダッシュボードが備わっています。
MFT の仕組み
MFT は、クラウドやプライベートネットワークで大容量のファイルを送受信する際の悩みを解消し、データ転送を効率化するとお伝えしてきました。それでは、MFT は具体的にどのような仕組みにっているのでしょうか。MFT の仕組みは3つのステップに分けることができます。
Step 1:オリジナルファイルの送信
例えば、機密ファイルをリモートオフィスのユーザーに迅速に送る必要があるとします。例えば、あなたがレストランのオーナーで、ある店舗の季節限定メニューを送ったり、取引先に監査レポートを送ったりする場合などです。送信する必要があるファイルが何であれ、MFT プログラムまたはプラグインで始めることになります。ファイルは、電子メールのプラグインや、ブラウザを介してMFT ソフトウェアにアクセスするWeb クライアントを介して送信できます。ファイルを自動的に送信するようにシステムを設定することも、パートナーまたはクライアントがアクセスできる専用のフォルダにファイルを配置することもできます。MFTは、暗号化を利用してデータを迅速かつ安全に転送することができます。
Step 2:MFT ファイルの暗号化
ファイルが電子メールで送信されたり、ブラウザにアップロードされたり、または監視対象フォルダに入れられたりすると、MFT ソフトウェアが機能してファイルを保護します。FIPS 140-2準拠のAES 暗号またはOpen PGP 標準を使用してデータを暗号化し、以下の転送標準を使用してファイルを保護できます。
また、効率を高めるため、MFT ソリューションでは、ファイルを送信する前に圧縮できます。
データが暗号化によって保護されると、ファイル転送を自由にスケジューリングできます。MFT では、Excel、XML、JSON などの一般的なフォーマットにファイルを変換することもできます。
Step 3:ファイルの配信と復号化
受信者がファイルを取得するとMFT ソフトウェアは、必要に応じてファイルを復号化し、特定のフォーマットに変換します。MFT ソリューションには通常、監査ログが含まれているため、何が誰にいつ送信されたかなどの重要な情報を追跡できます。これらのログにより、ファイルが配信されたかどうか、ファイルが開いているかどうか、転送が失敗したかどうかを確認できます。また、追跡およびログ機能により、ファイル転送がPCI、DSS、HIPAA などの主要な規制に準拠していることも保証されます。
CData Arc:ノーコードで手軽に使えるMFT ソリューション
今日のファイル転送に求められるのは、主要な連携先に対応し、DX を実現し、ビジネスユーザーが技術的詳細に悩まされなくて済むような、一元化された集中管理型のファイル転送ツールです。MFT システムはまさにそのようなソリューションを提供します。これこそが、現代の多くの企業がセキュリティで保護されていないアドホックなソリューションの寄せ集めを、MFT の集中化された効率的なソリューションでモダナイズしている理由です。CData Arc は、パワフルなMFT ソリューションであるだけでなく、手頃な価格とローコード・ノーコードの設定が可能で手軽に始められるオールインワンのデータ連携ツールです。